2013年5月22日水曜日

「東宮御所表敬訪問」感想


平成24年度富士章受章スカウト代表表敬
平成25年4月4日、35県連盟47人のスカウトが、東宮御所へ表敬訪問しました。皇太子殿下がスカウトたちをご接見されました。

東宮御所を訪問して
                  広島県連盟広島第26団 
                       佐々木 俊典 

201344日、私は東京の東宮御所に行き、皇太子様に謁見させていただきました。
これは、県内で富士章を獲得した者の中からただ一人のみに、与えられる最高の栄誉です。この貴重な経験を感想文という形で記していこうと思います。
43日。私は広島から東京都文京区にあるボーイスカウト会館へと向かいました。
広島からの新幹線の中で私は、他の参加する富士スカウト達の事を考えていました。各都道府県を代表する47人の富士スカウトはどんな人達なのか、どんな事をやってきたのか等、彼らに対する思いは楽しみというより緊張からくるものでした。スカウト会館に入ると、そこにはすでに15,6人程度のスカウトがいました。彼らの胸には様々な種類の宗教章やアワードが制服に刺繍されており、どれ一つとして同じ制服はありませんでした。それでも彼らが東宮御所へ赴くスカウト達だということは一目で理解することができました。  それは様々な種類のワッペンが刺繍されている中、どの制服にも左胸には共通して富士章が堂々と縫い付けてあったからです。たくさんの富士章を見た瞬間、心に火が付いたような、不思議な昂揚感が込み上げてきたのを憶えています。
受付が終わるとそれぞれの班への割り振りが行われ、スタッフの紹介が行われました。私の班は1班で班員は8人、うち二人は女性でした。班員の人と互いに話をしてみると、彼らとの話は非常に刺激的で、他県の活動状況や行事・地元特有の風紀等、スカウト活動に関する事だけでなく、今何をしているか、スカウト活動が今の自分にどう影響を与えているのか等彼らの人生観を聞くことができました。その中には、勉強に意味を見出す事ができず、やりたい事が見つからなかったとき、スカウト活動で海外の人と交流する機会があったことをきっかけに今世界中を旅している方がおられました。彼らとの交流で得た事は、今思えば皇太子様とお会いした事と同様に非常に貴重なものでした。他の人の考え方や価値観、将来への展望を知り、自分の考えが一新されていく実感を得る事はめったにない事だと思います。そんなめったにない経験をあの時私は確かに実感しました。
その後は東宮御所へ訪問した際の動きを練習しました。皇太子様がお見えになった時の隊形、皇太子様との会談の時の隊形、お辞儀のタイミングや角度、弥栄の統一等、東宮へ参った際の一挙手一動作すべてです。もちろん、練習の合い間の休憩や食事のとき等隙を見つけては他の班の人と「モテる方言は何か?」について討論をし、「大阪風と広島風どっちがお好み焼きか」を巡って大阪府代表と激戦を繰り広げ、自衛隊に務めているスカウトに「大砲の弾を砲弾に詰め込む作業」について熱く語っていただきました。残念ながら全てのスカウトとお話しをすることはできませんでしたが、彼らとの交流はとても12日とは思えないほど濃密でした。
二日目、朝礼を終えると皆バスに乗り込みました。バスの行先はお台場や桜田門を代表する東京の名所、おいしい中華バイキングの店、そしてこのプログラムの目的そのものであり、皇太子殿下御夫妻のお住まいである赤坂東宮御所です。一般の方はおろか、有名人でもごく少数の者のみしか入ることを許されません。
初めは皆悠々と構えていましたが、バスが進んでいくにしたがって、一様に口数が少なくなっていきました。私も初めは実感として湧くものが無かったので、緊張はあまりしなかったのですが、バスが警察官に厳重に守られている門を見、それをくぐった瞬間、「ああ、自分は今とんでもないところにいるんだな」と一気に緊張が込み上げてきました。
門をくぐり、おそらく庭であろう周囲を植物で囲まれた道をしばらく進むと、テレビで見たことのある建物が見えてきました。玄関の周りには耳にイヤホンをしたSPと思われる人や、白いタキシードを着た侍従の方が数人おり、少し慌ただしそうにしていました。
着くと、屋敷の前で記念写真を撮り、秘書と思われる女性の方から諸注意と一連の流れを説明していただきました。流れの説明の後、秘書の方の後ろについてくるように指示され東宮御所内へ足を踏み入れました。屋敷内は意外と落ち着いた感じで質素な印象を受けました。しかし、掛けてある絵や置物はどれも高そうなものばかりでした。入ってすぐ右手にある階段を上り、客室を通り過ぎた突き当りに会見の場所と思しき広間がありました。
ここで整列するように指示がありました。誰も話さず動かず気を付けの姿勢のまましばらく待ちました。緊張で呼吸は激しくなり、筋肉は強張り、鼓動の音が響くほど大きくなりました。どれだけの間待っていたのか分かりません。とにかく無心にただ待っていました。
「皇太子殿下、来られます。」この一言ではっと我に返りました。がちがちに強張った筋肉を動かし、練習通りお辞儀姿勢をとりました。シーンと静まり返った広間の中、カツ、カツ、カツと靴の音のみが響いてきました。カツン、カツン、カツンとその音は次第に大きくなり、お辞儀をして下を向いている私の視界の上方へ音とともに、黒い革靴が入り込んできました。歩く音が止まると皆一斉に顔を挙げます。隊列の正面に立っておられたのは紛れもない皇太子殿下でした。副理事長、代表スカウトのあいさつを終え、皇太子殿下への弥栄を終えると、いよいよ皇太子殿下との会談です。隊列を班ごとにU字隊形を作り、お話のし易い形をとりました。皇太子殿下は一番右端から順番にお話しをなさっていきました。皇太子殿下をお待ちしている間に侍従の方がジュースを持ってきて下さいました。緊張で喉が乾ききっていたので、とても嬉しかったです。しかし、困った事が起きました。皇太子殿下が近づいてこられる毎にグラスがどんどんと重くなっていくのです。すぐに片手ではもつ事ができなくなり、自分のお腹の前でぎゅっと両手でグラスを握りしめていました。そっと周りを見渡すと、皆、私と同じ姿勢を取り、グラスの重みに必死で耐えていました。 グラスは次第にガラスから鉄、鉛へと材質を変化させていきます。「もうだめだ、落ちる。」そう思った直後、「今までどうでしたか、スカウト活動は?」という落ち着いた声が聞こえてきました。目の前には皇太子殿下が笑顔で私を見つめておられました。私の順番が来たのです。そこからは自分が何を話したのかよく覚えていません。聞かれたことは「大変でしたか?」や「どういったことをやってきましたか?」、「今後はどうしていきたいですか?」の3つでした。聞かれたことに答えることに必死でした。つまらないことを言ってしまったかもしれません。しかし、皇太子殿下は私が話している間じっと私の目を暖かな目で見つめて下さっていました。そして最後ににっこりと笑って「そうでしたか、それはとても楽しそうですね。今後も頑張って下さい」とお言葉を下さいました。リハーサルの際の注意事項として皇太子殿下はお忙しい身であるため、班で実際に話しができるのは1人から2人と聞かされていたのですが、殿下は47名のスカウト全員とお話をなさいました。

以上が私が体験した東宮御所プログラムの全容です。楽しくもあり、感動もあり、自分の成長も実感できたこの12日はまさに夢のような一時でした。このような機会を頂けたことを本当に感謝しています。そしてもしこれをご覧になっている方の中で、今スカウトだというあなた!!是非ベンチャースカウトになって、富士章を目指してみて下さい。はっきりいって楽しい事だけではありません。辛いことの方が多いかもしれません。でも、それを乗り越えてやり遂げたとき、富士スカウトになったとき、きっと大声を上げて叫びたくなるような喜びが団体で押し寄せてきます。そして、心からやっててよかったと思えるようになります。そんな経験味わってみませんか?
それでは、皆さんのスカウト活動が実りあるものになりますように。

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